「花椿」

知人と話していた時に
子供の頃共通して見ていた
おしゃれな企業PR誌の話になった。
今で言うフリーペーパーのような冊子である。
母が化粧品を買うと、店員さんが紙袋に最新号を入れてくれた。

資生堂の「花椿」。

地方都市の核家族の家、
母の三面鏡の辺りに
化粧品の紙袋に入ったまま置いてある。
円柱型のベルベットのスツールに座って
くるくる回りながら、表紙を開く。
驚くほど、美しい写真と洗練された最先端の記事。
とっても遠い大人の世界。
近寄りがたさゆえの憧れは、見るほどに増していった。

後にデザインを学んで、
そのアートディレクションが
仲条正義氏によるものだと知る。

あの頃、大人だと思っていた年齢は
あまりお化粧品にお世話になることもなく
とっくに過ぎてしまったが、
ダイナミックな構図で切り取られた
神秘的で美しい、
山口小夜子氏の横顔は忘れることはない。

今週読んだ本
「世界文学は面白い」奥泉光・いとうせいこう
他1冊


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